熱に弱い素材を使って草木染めをする場合、酸性抽出と言って酸を使って染めることがあります。
私は主にお掃除用のクエン酸を使いますが、その他食酢や酢酸でもできます。
草木染めの酸性抽出について私がいつも行っている方法を書いてみます。
草木染めの酸性抽出はどんな時にやるの?
草木染めの一番簡単な方法は材料を煮て染液を作るやり方です。
鍋に入れて煮るだけなので簡単ですが
中には煮出しに向かない素材もあり、そんな時は酸性抽出を使います。
酸性抽出を使う場合はどんな時かというと
・熱に弱い材料を使う時
・アントシアニンの色素を取り出す時
・ミョウバンなどの媒染液の代わりに使いたいとき
酸性抽出は熱(火)を使わない方法です。
生の花を使う場合、煮出すと色あせてしまうので酸性抽出で染液を作ります。
また、アントシアニンは酸によく溶ける性質があるので、
アントシアニンの染液を作る時もこの方法を使います。
※ アントシアニンを含む材料はぶどう・ハイビスカス・ブルーべり・カシス・なす・赤紫蘇・紫キャベツ・バタフライピーなど
アントシアニンはpHによって色が変わるので、好みの色を出すために酸やアルカリを使うこともあります。
(乾燥すると色が変わったりするので思い通りの色に染まるとは限りません)
媒染はアルミや鉄などの金属を使うことが多いですが、酸や塩にも色止め効果が少しあります。
金属媒染の化学反応で色が変わってしまい、思い通りの色にならない場合は
媒染剤の代わりに酸を使うことがあります。
染液作りと媒染の両方を酸で行うということです。
媒染の工程を省けて、染色と媒染が一緒にできて一石二鳥な感じですが
金属に比べて酸の色止め効果はあまり高くありません。
何回も洗濯をすると段々色落ちしてくるので、また染め直す必要があります。
酸性抽出で用意するもの
・布 (※コットンや麻の場合は下処理か濃染処理が必要)
・酸 (食酢・クエン酸・酢酸など)
・ボウル (化学反応を起こさないようにステンレス、ホーロー、樹脂製のもの)
・ゴム手袋
・焼きみょうばんなどの媒染剤 (媒染しない場合は必要なし)
・濃染剤 or 豆乳か牛乳 (下処理・濃染処理をしない場合は必要なし)
※布の下処理、濃染処理の詳しいやり方は基本の草木染めの記事に書いてあります。
下処理は事前に豆乳(牛乳)と水1:1の液に布を20分ほどつけて乾燥させておきます。
濃染処理をする場合は染液につける直前に濃染剤に布を20分ほどつけてから良く洗います。
酸性抽出のやり方
1 花などの材料をネットに入れる
そのままでもできますがよく揉んで色素を出すので細かいカスがでます。
漉すのが大変なのであらかじめ不織布の排水溝ネットなどに入れておくと楽です。
2 酸性の液を用意(ゴム手袋着用!)
食酢・クエン酸・酢酸のどれかでできます。
食酢は食用の酢なのでキッチンにありますね。
クエン酸もスーパーに売っているようなお掃除用や食用の粉末のものです。
酢酸はドラッグストアで手に入ります。
酸の濃度は決まりがあるわけではありませんがいつも私がやっている方法を書いてみます。
食酢は水と1:1の割合で混ぜて使います。
においがしますが、最後に洗い流すので出来上がりはほぼにおいません。
うちで使っている穀物酢や米酢は酸度がだいたい4~5%台なので
半分に希釈して2%くらいで使っています。
クエン酸は10%くらいの液体で使っています。
水500mlにクエン酸の粉末40gくらいで十分に色が出ます。
酢酸は水を足して2%くらいに希釈して使います。
90%以上の酢酸なら水500mlに小さじ2杯くらい混ぜて使っています。
酢酸原液は危険なので子供には触らせないように注意してください。
(大人も注意!)
濃度の高い酢酸を素手で触ると、皮膚が火傷のような感じになって
しばらくヒリヒリ痛いので必ずゴム手袋をしてください。
酢酸以外でも素手で作業をすると手が荒れるので、ゴム手袋を忘れずに。
3 材料を酸の液につけてもむ(ゴム手袋着用!)
材料が乾燥している場合、凍っている場合は20分くらい浸けてふやかしてからもみます。
花びらを細かくすりつぶす感じで揉んでください。
※色が出にくい場合は揉んだ後ミキサーで花びらと液を細かくして漉して液だけボウルに戻す
※沸騰しないくらいのお湯で揉むと色が出やすくなることもあります。
4 濃染処理
布を用意。
下処理不要の布または下処理済みの布ならそのまま5へ
濃染処理をする場合は濃染剤を用意します。
ディスポンを使う場合は1Lの水に3~4mlを溶かして布を20分ほどつけた後よく洗います。
しつこいようですが詳しい濃染処理のやりかたは基本の草木染めに書いてあります( ̄▽ ̄;)
ディスポン以外の濃染剤もあります。
5 出来た染液に布をつける(20分~数時間)
下処理をした布、下処理不要の布は一度水かぬるま湯につけてから染液に漬け込みます。
(乾いた布を直接染液に入れるとムラになりやすいので)
濃染処理をした布は濡れているはずなのでそのまま染液につけます。
よく染まるものだと15~20分くらいで色がつきます。
染まりにくい場合は数時間漬け込むこともあります。
また2回目、3回目の残液で染める場合も染まりにくいので少し長めに漬け込みます。
温度が高い方が反応しやすいので、50~60℃くらいのお湯で湯せんしながら漬けると少しだけ染まるのが早くなります。
6 媒染をしないで、酸を媒染代わりにする場合はよく水洗いして陰干し
色が足りない場合は乾燥させた後にもう一度染液に漬けてもOK
乾燥させると色が微妙に変わることがあります。
媒染する場合は7へ
7 媒染液を作り20分ほどつける(媒染液が熱ければ冷ましてからつける)
媒染液はアルミ媒染、銅媒染、鉄媒染など色々あります。
一番簡単に手に入るのがアルミ媒染で
スーパーで焼きミョウバンを買ってくれば作れます。
今回はミョウバンで説明してみます。
他の媒染液のやり方は基本の草木染めの記事に記載
お湯500mlに小さじ2杯くらい
水だと溶けにくいのでお湯を沸かして溶かします。
染液を煮出す場合は熱いままの媒染液に漬け込みますが
酸性抽出の場合は熱に弱い色素を使うことが多いので
変色を防ぐために少し冷ましてから媒染液につけてください。
温度が高い方が反応しやすいので60℃くらいまで冷めたら布を入れてしまいます。
8 水洗い
軽く洗い色を見て染まっていれば、よーく洗ってから陰干しして乾燥
色が足りなければ再び染液と媒染液を繰り返し、最後に染液につけた後水洗いして陰干し
染液 → 媒染 → 染液 → 媒染 ・・・・・・・染液 → 水洗い → 陰干し
9 乾燥した後色を見る
色が薄ければもう一度染液につけて重ねて染めることができます。
色が良ければアイロンをかけて完成
色落ちしにくいように、洗う時は中性洗剤で、乾かす時は陰干しで乾かしてください。
まとめ
【草木染の酸性抽出はどんな時にやる?】
・生の花びらなど熱で変色する材料を使う時
・アントシアニンの色素を濃い色で取り出したい時
・pHによって色が変わる色素の時
・媒染剤を使いたくない時
【酸性抽出~染色~媒染の材料】
・布 (※コットンや麻の場合は下処理か濃染処理が必要)
・酸 (食酢・クエン酸・酢酸など)
・ボウル (化学反応を起こさないようにステンレス、ホーロー、樹脂製のもの)
・ゴム手袋
・焼きみょうばんなどの媒染剤 (媒染しない場合は必要なし)
・濃染剤 or 豆乳か牛乳 (下処理・濃染処理をしない場合は必要なし)
【酸性抽出~染色~媒染のやり方】
0 布の下処理(必要な場合のみやる)
1 材料(花など)を不織布のネットに入れる
2 酸性の液を作る(酢・酢酸・クエン酸など)
3 酸性の液に漬け込む
4 濃染処理(必要な場合のみやる)
5 染液に漬け込む
6 水洗い
→媒染しない場合はよく洗って陰干し
→媒染する場合は7へ
7 媒染液につける
8 よく洗う
→色がよければ陰干し
→色が薄ければもう一度染液→媒染液→染液→水洗い